木の価値を高めるにはソートを適切に行うことが必要で、例えば育林なら間伐のための選木がまさにそうだし、枝打ちもそれぞれの木に応じたやり方を選ぶという意味でやはりソートが重要になる。木材加工でも、製材した中からきれいな木を選び出して有利販売することはどこもやっているし、流通業者の重要な役割のひとつにやはりソートがある。
ただ、昨今の林業現場でソートが適切に行われているかと言うと、もちろん、多くの方々はそこにこそ力点を置いて仕事をなさっていると思うが、単に効率を優先するだけの施業が行われている現場も少なからずあるのが実情だ。ソートとは価値を付加する人為であり、それを放棄してしまえば単なるコスト競争に陥ってしまう。
木材の加工流通に関しては、製材品の品質に応じたソートがユーザーにわかりやすい形では行われていないという問題がある。これはたくさんの反論もあると思うが、客観的な品質保証システムであるJAS規格は、製材品に関してはまったく機能しておらず、私はそれは大きな問題だと思っている。
もちろん、現行のJAS規格は、規格の内容や利用コスト、検査体制などに関してさまざまな課題があるが、「課題があって使いづらい制度」だから「利用しない」となってしまっていて、そうした品質保証システムが機能している方がいいのかどうか、あるいは現在の課題を解決してより良い制度にするにはどうするか――といった議論がまったくなされていない。
木材に関するもうひとつの問題は、木材業界の人材育成が個別の事業体に任されているだけで、業界としての取り組みがほとんどなされていないことだ。
林業の場合は、10年ほど前から「緑の雇用」事業が実施されていて、中身的にいろいろな問題があることも事実ですが、それでもこの事業によってたくさんの人が林業界に参入してきた。さまざまな研修も行われていて、自分の立場や仕事を客観的に眺めたり、人脈をつくったりする機会も豊富にある。そうやって参入し、育てられた人たちがそれぞれの職場で働き、あるいは独立して事業体を立ち上げ、あるいは新たな事業(特伐など)を興し――と、さまざまな活動を展開していて、それによって林業界では人材の層が確実に厚くなったと思う。
一方、木材業界はどうかと言えば、経営者の方はJCや木青連などでさまざまな学びの機会があるが、多くの場合、スタッフはOJTで学ぶしかない。自分の仕事にやりがいを見出すには、スキルアップを図ったり、さまざまな知識(例えば、川上の林業や川下の建築など)を得たり、幅広い人脈を得たりすることが有効だが、そうした機会は限られていて、業界として人を育てる仕組みはほとんどないと言っていい。
仕事は行政や補助金がつくるものではなく、人がつくるものであるから、木材業界がこうした状況にあるということは、林業界にとってもゆゆしきことだ。木材をよりよく利用するための人材をどう育てるかという課題に、業界はすぐにも取り組むべきだと思う。
「木の価値を高めて林業を元気にする」ためには、ほかにもやらなければいけないことがたくさんある。これからもいろいろな議論を巻き起こしていきたい。
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